吉祥寺生まれの歌姫とやらの広告にケチをつけながら、いつもの風俗へ向かう

朝の通勤ラッシュに辟易しながら吊革につかまっていると、非常に簡素な作りの広告が目に入った。
「吉祥寺生まれの歌姫 ついにデビュー」という、この言葉の豊かな国に生まれた人間が考えたとはおよそ思えないキャッチコピーが申し訳なさそうに余白に横たわっていて、一番華やかであるべきその「井の頭公園の歌姫」とやらは、何か辛い事でもあったのかと心配してしまうような陰気な顔で、広告のど真ん中にぼんやりと配置されていた。
吉祥寺生まれって言われても、反応に困るよなぁ。
第一、吉祥寺出身のミュージシャンなんて山ほどいるだろう。
もっと田舎の、故郷を愛する人が多く、公民館にとっくに旬の過ぎた芸人が来るだけで家族総出でちょっと古いが未だに運動会や何かの記録を撮るのに大活躍のビデオを担ぎ、大騒ぎしながら向かうような、そんな古き良き日本のような処でならこんなキャッチコピーも、こんな簡素な広告もいいのかもしれないが。
逆に、この都会のど真ん中にあって、芸能人など道を歩けばどっかしらに居て、雑誌に載っている服などどこで買おうか悩むほどどこでも売っていて、何の気なしに普段着であくび混じりの暇潰しに話題のカフェに足を向けるような、そんな土地柄だからこそ、こんな素朴な作りにしたのかもしれないな。
そんなことを考えながら、僕はいつもの吉祥寺の風俗へ向かうため、井の頭線に揺
られるのだった。

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